離婚前夜に身ごもったら、御曹司の過保護な溺愛に捕まりました
 こうやって一年、私は翻弄されてきた。本当に踏み込みたい線の先を煙に巻かれたまま。

「智秋だって割り切るタイプじゃない。契約結婚なんて言うくらいだし」

「そうかな。案外湿っぽいタイプかも」

 お互いに一年で別れると決めての結婚だ。

 好きになったからとわがままを言うのは違うし、自分の気持ちを明かして智秋の興味を失うのが怖い。

 彼は表立って私を嫌う姿を見せないだろう。しかし間違いなく距離を取って私から離れていく。

 不特定多数の人々に向ける愛想のいい笑顔を浮かべ、誰にでも吐く耳障りのいい言葉を口にして。

 彼が私を大勢の人間の中のひとりとしてしか見なくなるのが恐ろしい。

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