離婚前夜に身ごもったら、御曹司の過保護な溺愛に捕まりました
 恥ずかしすぎて死んでしまいたい。

 だが、彼との最後の夜を過ごさなければよかったとは思えなかった。

「ちあ、き……っ」

「なあに、咲良」

 いつも私を呼ぶのと同じ声でありながら、普段とは違って取り繕った感情がこもっていない。

 ノイズを感じない智秋の声はまっすぐで、やはり余裕がなくて、この世にたったひとつだけの宝物を相手しているかのように甘く響く。

 身体を起こした智秋と目が合った。その瞬間突き抜けた想いに息を止める。

 彼の切なげな表情に隠しきれない昂ぶりが映し出されていた。

「そんな顔、するんだね」

「……見たくなかった?」

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