離婚前夜に身ごもったら、御曹司の過保護な溺愛に捕まりました
 智秋らしくない臆病な返答に感じて首を横に振る。

「ずっと見てみたかった」

 噛み合っていないが、それが私の本心だ。

「いつも自分を作ってるなと思ってたから。そういう顔もできるんだなって」

「どんな顔を言ってるか俺にはわからないけど」

 智秋が私の腰に手をかけ、肌を重ね合わせる。

「咲良にしか見せない顔だと思うよ」

「――っ」

 男性とベッドをともにした経験がなかった私が初めて受ける痛み。

 智秋が極限まで気を遣ってくれているのはわかるが、そのせいで彼をひどく我慢させているようで申し訳なさが募る。

「……っ、痛い?」

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