離婚前夜に身ごもったら、御曹司の過保護な溺愛に捕まりました
 この人は責任を感じて、夫婦になろうと提案しているのだ。

 ありがたい、申し訳ない、寂しい、切ない。そういった気持ちが一気に湧き上がる。

 都合のいい結婚相手がいればいいと思っていた昔の私を引っぱたいてやりたい。

 彼と結ばれるならちゃんと愛を分かち合う夫婦になりたかった。

「咲良」

 素直に智秋の提案を受け入れられずにいると、言い聞かせるように優しく名前を呼ばれた。

「なにも心配しなくていい」

 智秋が私の手を包み込む。

「今度は赤ちゃんごと愛して、君を俺に繋ぎ留めるよ」

 あんまりにも優しくささやくから、愛されて二度目のプロポーズをされたのだと錯覚しそうになる。

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