カクレンボ
「幼稚園以来?」

「うん。あのときは積もった」

 雪は記憶を探ることをせずとも覚えているようだった。わたしは覚えていないのに。

「そうだっけ。よく覚えてるね、そんな昔のこと」

「まあ、ね」

 少し頬を赤らめて雪はそう言った。

「幼稚園依頼って、わたしたちまだふたりだったとき?」

「たしか、ふたりで雪だるま作ったから、まだ空たちとは話してないと思う」

 雪だるま作れるくらい積もったんだ…。この量だと、今年は積もらなさそう。雪遊びしたいから積もってくれてもいいのに。まあそんなにうまくいかないか。


「空ってさ、桜のこと好きなのかな」

 悩みなんて一つも持ってなさそうな空だけれど、雲が被ったことでモヤモヤしているようにも見える。

 雪からそんなこと言ってくるなんて思わなかったわたしは、降る雪なんかどうでもいいと言わんばかりに立ち尽くした雪を見た。

「そうなの?そうは見えないけど…」
 
 今まで、特に最近のふたりを振り返ってみても、好きだなんて程遠いほどだ。今日も空は桜と一緒に留守番をしておくのを嫌がっていたように見える。

「好きな人にあんなちょっかいかけるの?わたしだったら絶対しないけど」

「人によると思うけど、好きだからちょっかい出すんじゃない?」

 雪がわたしと体が向き合う形になってそういう。

 なんで好きな人にちょっかいをかけるんだろう。そんなの、嫌われに言ってるようなもの。逆効果だと思うけれど…。わたしは口には出せず、反論することができなかった。

「あのふたり、ずっとちょっかいかけてるから、今更曲げれないと思う。それに、ちょっかいかけなくなったらそれこそ嫌いになったってことじゃない?」

「どういうこと?」

「嫌いな人にわざわざちょっかい出す?まだ、ふたりとも子供らしいとこあるから、単純にかまってほしいってのもある気がするけど」

 幼なじみだからっていうのもあるかもしれないけど、雪はそれほど二人をよく観察してる。わたしは一つも気づけなかったのに。
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