カクレンボ
「華もすれば?気持ちいいよ」
「私はいいよ。恥ずかしいし」
胸元で小さく手を振った。
西日が傾きつつある空。もう5分もすればこのあたりは真っ暗になる。
「あ、雪くんからだ」
ポケットに入っていたスマホが着信音とともに揺れている。私はスマホを取り出して電話に出た。
『もしもし華?あとどのくらいでつく?』
「ああ…、もうすぐ帰れるよ」
桜ちゃんの方に目線を持っていき、反応を伺う。でも彼女はニヤリと笑うだけで何もいってこなかったから、曖昧に返事を返しておいた。
『わかった。じゃー待ってるね』
通話越しに、雪くんがほほえんでいるのがわかった。
雪くんはそう言うと電話を切った。そして私は、無意識に「ゆきくん…」と誰にも届かない声を漏らしていた。
「自覚はできた?」
「え?なにが」
「恋の自覚よ」
いきなり何を言い出すのかと思えば…。「してない」
ほっぺを小さく膨らませたくなるような感情を抑える。あたかもからかわれているようだ。彼女の顔がそう物語っている。
「いい加減したらいいのに。幼馴染には気づかれるよ」
「それって、雪くんももう気づいてるってこと?」
「あ、今自覚したね」
しまった。言葉で操られてしまった。そんなつもりはなかったのに。
「いや、そういうわけじゃ」
弁明しようとするけれど、桜ちゃんの目は誤魔化せそうにないのはさっきからわかっている。
「恋ってねどう頑張っても苦しむの。遅かれ早かれどっちにしてもそう。でもね。それよりも苦しむのは、自分の気持ちに嘘をつくことだよ?」
自分の気持ちに嘘をつく…か。そうなのかな。私の心も。
「自覚のない人もいるけどね。華、うち思うんだ。自分の心には嘘つけない。決めたの。うち、空に告白する!ちゃんと真っ当に自分の意見ぶつけてくる!あいつが死ぬくらい太い矢を放ってくるよ」
あの彼方空の夕日に照らされた桜ちゃんは、浮かびかけている星よりも神々しく、そしてきれいに私の目に写った。
彼女の勇気はスゴイと思う。私にはそんなもの湧きもしない。でも、私は複雑に思う。素直に頑張れと言うべきなのか。止めるわけにも行かないけど私は不安。
「だから華も頑張って!焦るなとは言わない。ゆっくりでいいから。まずは本当の自分を知ることだね」
自分のことで精一杯で、他人の事情には気付けないし、気にかけることもできなかったのに。ただその優しさに、甘えている。そう実感した今も、彼女の笑顔で私の頬も緩んでいる。甘えたままではいけないのに。
「ちょっかいかけてたのは、嫌いだからじゃなかったんだね」
「え?何の話?」
「なんでもない。それより、そろそろ帰んないと」
「私はいいよ。恥ずかしいし」
胸元で小さく手を振った。
西日が傾きつつある空。もう5分もすればこのあたりは真っ暗になる。
「あ、雪くんからだ」
ポケットに入っていたスマホが着信音とともに揺れている。私はスマホを取り出して電話に出た。
『もしもし華?あとどのくらいでつく?』
「ああ…、もうすぐ帰れるよ」
桜ちゃんの方に目線を持っていき、反応を伺う。でも彼女はニヤリと笑うだけで何もいってこなかったから、曖昧に返事を返しておいた。
『わかった。じゃー待ってるね』
通話越しに、雪くんがほほえんでいるのがわかった。
雪くんはそう言うと電話を切った。そして私は、無意識に「ゆきくん…」と誰にも届かない声を漏らしていた。
「自覚はできた?」
「え?なにが」
「恋の自覚よ」
いきなり何を言い出すのかと思えば…。「してない」
ほっぺを小さく膨らませたくなるような感情を抑える。あたかもからかわれているようだ。彼女の顔がそう物語っている。
「いい加減したらいいのに。幼馴染には気づかれるよ」
「それって、雪くんももう気づいてるってこと?」
「あ、今自覚したね」
しまった。言葉で操られてしまった。そんなつもりはなかったのに。
「いや、そういうわけじゃ」
弁明しようとするけれど、桜ちゃんの目は誤魔化せそうにないのはさっきからわかっている。
「恋ってねどう頑張っても苦しむの。遅かれ早かれどっちにしてもそう。でもね。それよりも苦しむのは、自分の気持ちに嘘をつくことだよ?」
自分の気持ちに嘘をつく…か。そうなのかな。私の心も。
「自覚のない人もいるけどね。華、うち思うんだ。自分の心には嘘つけない。決めたの。うち、空に告白する!ちゃんと真っ当に自分の意見ぶつけてくる!あいつが死ぬくらい太い矢を放ってくるよ」
あの彼方空の夕日に照らされた桜ちゃんは、浮かびかけている星よりも神々しく、そしてきれいに私の目に写った。
彼女の勇気はスゴイと思う。私にはそんなもの湧きもしない。でも、私は複雑に思う。素直に頑張れと言うべきなのか。止めるわけにも行かないけど私は不安。
「だから華も頑張って!焦るなとは言わない。ゆっくりでいいから。まずは本当の自分を知ることだね」
自分のことで精一杯で、他人の事情には気付けないし、気にかけることもできなかったのに。ただその優しさに、甘えている。そう実感した今も、彼女の笑顔で私の頬も緩んでいる。甘えたままではいけないのに。
「ちょっかいかけてたのは、嫌いだからじゃなかったんだね」
「え?何の話?」
「なんでもない。それより、そろそろ帰んないと」