首取り様1
気持ちの問題のせいか、急に肌寒くなってきた気がする。


「誰かいませんか!?」


明宏が立ち上がり、カウンターへ向けて声をかける。


しかし返事はない。


「おかしいな」


慎也も気になったのか、2人でカウンターの奥へと近づいていった。


その奥には厨房がある。


銀色の重たいドアを押し開けて中を確認してみるが、やはりそこにも人の姿はなかった。



ただ、ついさっきまで誰かが料理をしていたような、香りだけは残っている。


「どういうことだよこれ」


慎也が苛ついたようにつぶやく。


恐怖心よりも、わからないことへの怒りが先立っている様子だ。


「昔、似たことがあったらしい。誰もいない船の中にはついさっきまで人がいた形跡があった。それでもやっぱり誰もいないんだ」


明宏は説明しながら自分で身震いをする。


慎也はチッと小さく舌打ちをして、大股で席へと引き返した。


「誰もいない」


吐き捨てるように全員に伝える。
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