首取り様4
グッと拳を握りしめて地蔵を見上げる。


知らない女の顔が大輔を見下ろしていた。


その目がとても冷たく、一瞬で背筋が氷ついた。


その目はなにも見ていない。


人を殺すことをなんとも思っていない。


ただ目の前の目標を果たすためだけに動いている。


感情のないロボットと同じだ。


そう感じた瞬間大輔の体は動かなくなった。


これほどまで冷たい目を見たことがなかった。


「大輔危ない!」


地蔵が両手を伸ばしてきていて、春香が大輔の体を突き飛ばした。


横倒しに倒れる大輔。


地蔵の両手が大輔の代わりに掴んだのは、春香の首だった。


春香が小さく悲鳴を上げる。


佳奈と明宏が叫んでいるけれど、声が聞こえてこなかった。


大輔にはそれがすべてスローモーションのように見えていた。


地蔵の両手が春香の首を掴み、そのまま持ち上げる。
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