首取り様4
玄関に駆け込み、すぐに鍵をかける。


同時に佳奈はその場に崩れ落ちていた。


全力で走ってきたため心臓は破れてしまいそうなほど早鐘を打っている。


呼吸は乱れて、全身に粘つく汗が流れていた。


「ありがとうございます」


佳奈はそう言うだけで精一杯だった。


よくここまで走ってくることができたと、我ながら驚いている。


きっと自分1人だけならとっくに諦めて殺されてしまっているところだ。


助けてくれた男性をよく見てみると、50代くらいの人だということがわかった。


玄関にはシカの頭の剥製が置かれているし、玄関マットはたぬきの顔がついた皮だ。


この人が敏腕猟師であることは一目瞭然だった。


「銃でも死なない生き物を初めて見た」


男性はそう言って軽く笑って見せた。


それで少しだけ場の空気がなごだ気がした。
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