ゆびきりげんまん
「沙羅?」

「あ、うん。なんでも」


 ないと答えようとしてやめた。


「ともちゃん、あのね」

 私は昨日のことをかいつまんでともちゃんに話した。


「ふーん。なるほど、それで沙羅、変だったのね」

「うん……」

「そうねえ。王子は沙羅のこと、恋愛感情かはわからないけど、とても好きなんだろうね。そうじゃなきゃ、チョコを沙羅の口に入れるなんてことしないし、悩みを相談もしないよ。沙羅には気を許しているんだよ」

「う……ん。たぶん、葵君は私に対しては昔のままなんだと思う」


 そう言って、私は目を伏せる。


「私は葵君にとってお姉ちゃんみたいなものなんだよ」


 呼び方が「沙羅さん」に変わってどきどきしているのは私だけなんだ、きっと。


「お姉ちゃん、ね。まあ、それだけかはわかんないけどね」


 ともちゃんは意味深に言って笑ったけど、


「それだけだよ」


 と私は返した。


「まあ、でも他の女子には知られないようにしないと、女の嫉妬は怖いからね」

「うん……。そうだね」
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