彼は私を偏愛している
鳥籠
「ヒナ、いい?
今日から、僕が大学まで送り迎えするからね」

「うん」
言い聞かせるように言ってきた亜舟に対し、頷く雛菜。

「大学では、必要以上に人に関わらないでね」

「うん」

「ヒナ、言っておくけど……
僕は、いつでもヒナを見てるからね!」

「わかってるよ」

「次、僕を裏切ったら……」

「亜舟くん?」

「ヒナを殺して、僕も死ぬから!」


そして大学まで送った亜舟が、雛菜の手を握りしめ言った。

「ヒナ、今日帰ったら大事な話があるんだ!」
「うん、わかった!」
亜舟が雛菜の頭をポンポンと撫で別れた。


「雛菜、今すぐ別れろよ!」
講義室に入り、既に席についていた頼廣。
挨拶より先に、雛菜に言った。

「無理だよ」
「なんで!?俺が、守るよ?」
「頼廣くん、ごめんね。
私は、亜舟くんのこと大好きなの」
「あんな狂った男でも?」

「狂ってる…よね……」

「うん」
「でも、私の全てだから」

「雛菜…」

「亜舟くんに言われたの」

「え?」


『ヒナ、どうしたい?』
『え?』

『僕から、放れる?』

『え……』

『出来ないよね?10年間僕だけを思ってたヒナが……いや、違うな。
生まれた日から、ヒナは父さんに侵されていたんだよ?
僕とヒナは“運命の二人”
だから、放れられない。二人でないと幸せになれないってね。
父さんは、ヒナのお母さんのことスッゴく愛してたの。でも、事情があって一緒になれなかった。
だから、父さんはヒナを僕の嫁にしておばさんの身代わりにと“家族”になることを決めたんだよ?
だから僕は、ヒナが生まれた日からずっとヒナを支えて生きてきた。
おばさんが亡くなって距離を置いたのも、ヒナを僕から放さない為の戦略。
一度退けば、ヒナはもう……僕から放れられなくなる』



頼廣は信じられない思いで、雛菜を見ていた。

「━━━━━だから、ごめんね頼廣くん。
私、もう……亜舟くんから放れられない。
亜舟くんしか満たされないの」



「雛菜は“始めから”阿久津 亜舟に囲われてたんだな……」



大学が終わり、亜舟が迎えに来る。
車に乗り込み、亜舟の実家に向かった。

「雛菜。“おかえり”」

「え?おじさん?」


「違うよ、雛菜。
僕は今日から、雛菜のパパだよ!」


「ヒナ、早いけど籍を入れよ?」

「え?でも、大学卒業してからって言ってたでしょ?」

「うん。大学はちゃんと卒業させるよ。
でもヒナが思ってたより鈍感で無防備だから、目に見える証をつけることにした。
だから、ヒナ。
今すぐに、僕のお嫁さんになって?」
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