指先から溢れるほどの愛を
この想いがオレの完全な一方通行じゃないのなら、律儀にこの距離を守ってやる必要はもうない。

そうして臨んだデートの日。

まぁ分かっちゃいたけどミーコの想像以上の鈍感さと予想外の藤川の登場に、抑えきれずついあんな所であんな風に伝えちまったが、伝えたいと思った時に伝えておかないとすれ違っちまうことはあいつらで学習済み。

あいつらっつーのは、かつてオレがお節介を焼いちまったあの二人のこと。

だから車に戻ったらさらに畳み掛けるつもりでいたのに、店を出た所で次の現場から入り時間を早めて欲しいと連絡が来てしまった。

タイミング悪。送ってやれるだけの余裕を持って予定組んだのに。


「送ってやれなくてごめん」そう言ったオレにミーコは、「もともと買い物でもして帰る予定でしたからお気になさらず!今日はご馳走様でしたっ!お仕事頑張って来て下さい!」と真っ赤な顔のまま早口で捲し立て、光の速さで去って行く。

……ああもうくそ可愛い。

あんなわかりやすく動揺しちゃって。

でもいい反応。

オレはニヤけそうになるのを何とか堪えて一人車へ戻り、次の現場へと向かったのだった。
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