指先から溢れるほどの愛を
だから週明けに話を聞いてもらおうと思っていたのに、締め切り前の急な記事の差し替え対応やら何やらで毎日忙しく、結局個人的な話をする暇もなくヘッドスパの日を迎えてしまった。

坂崎さんに会うのはあれ以来で、どういうテンションで行けばいいのか分からない。

とりあえずいつものように"今から行きます!"のメッセージと共に、真顔で空を飛んでいるウサギのスタンプを送って会社を出る。

濁った宵の空から小粒の雨がパラパラと降って来ていた。

今日雨予報だったっけ?傘持ってないけどまぁこのくらいならなくても全然平気だな。

ところがしばらく歩いている内に次第に小粒だった雨粒が大きくなり、あっという間に土砂降りになってしまった。

うわっ、これはマズイ!

すぐ近くのコーヒーショップの軒先に一瞬避難させてもらい、濡れた頭や肩をハンドタオルで拭きながら考える。

この感じはすぐ止みそうにはないな……。

さっき通り過ぎて来たコンビニに戻って傘を買う?

でもここまで来てしまったらコンビニよりも坂崎さんのお店の方が断然近い。

そう判断した私はバッグを頭上に掲げお店まで強行突破を決め込んだ。その時。


「おい、待て相原」


横から肩を掴まれ呼び止められる。
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