悪役令嬢の幸せ愛人計画〜王太子様に(偽)溺愛されています〜

都合の良い話には裏がある

「……痛いってどういう事?」
「ま、待って?!そんな事より婚約者がいるってどういう事ですか?!」

 良からぬ事を考えていると察してか、非常に爽やかな笑みを浮かべて問うたリーヴェスに、ユリアーネは鬼気迫る勢いで問い返した。
 ユリアーネを愛人として買ったのに、婚約者が居ると言ったのか、この男は。

「そうだね」

 紅色の瞳を細めて微笑むリーヴェスから、混乱しながらもユリアーネはズルズルとソファーの上で距離を取ろうとする。
 ユリアーネの頭の中で、クズだの最低だのというワードが飛び交った。アンゼルムといい王子というのは、こうも女にだらしないのだろうか。

 やはり、都合のいい話には裏がある。
 ユリアーネは額を手のひらでおさえた。

「こ、このお話、降りる……事は……」
「出来るの?」

 ユリアーネは無言で返事をした。借金の2文字が脳裏にチラついている。

「でもこれって、浮気ですよね?」
「まあそうなるね」

 リーヴェスはアッサリと頷いた。少しも悪びれる様子などない。ユリアーネの罪悪感を分けたい位だ。
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