悪役令嬢の幸せ愛人計画〜王太子様に(偽)溺愛されています〜
「でもさ、浮気ってどこからが浮気だと思う?」
「うーん、キスをしたら……でしょうか?」

 手を繋ぐ位だったら、ダンスでよくある。一々浮気だのなんだの言っていたら、社交界なんて成り立たないだろう。

 悩みながら結論を出したユリアーネの頬に手を当てて、リーヴェスは一気に距離を縮めた。掠めるようにして、ユリアーネの唇にリーヴェスのそれが触れる。
 何が起こったのか追い付かないユリアーネに、リーヴェスは至近距離で意地の悪い笑みを深くした。

「これで――、浮気になっちゃったね?」

 一拍の後にキスをされた、と理解したユリアーネは顔を真っ赤に染めた。口に手を当てて、言葉に詰まる。

(なんで?!なんでキスしたの?!)
 言葉が出てこない代わりに、ぐるぐると頭の中では考える。本当はずっと違和感があったのだ。何故、リーヴェスがここまでするのか。

 記憶を辿って、ユリアーネは額から手を離した。
 先程よりも幾分か冷静だ。理由が分かったから。

「……ここまでしなくても、逃げません」

 というか逃げられない、と言った方が正しいのだが。
 リーヴェスは少しだけ目を見開いて、純粋な笑みを浮かべる。

「そう?それなら良かった」

 少し安堵した様子だったので、どうやらユリアーネの逃亡を心配していたらしい。徹底的に逃げ道を塞がれている気がしていたのは、正しかったのだろう。
 性癖とどっちが大変な話かと問われると、悩んで答えが出せない位には厄介な話だった。ド修羅場に自ら突っ込んで行くようなものである。
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