悪役令嬢の幸せ愛人計画〜王太子様に(偽)溺愛されています〜
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ペンを手に持ち、手元の書類に目を落としていたリーヴェスは、ふと顔を上げた。部屋の前が少し騒がしい。
許可した後に入ってきた騎士が、困惑したような表情で来訪者の存在を告げた。
「アマーリエ侯爵令嬢がリーヴェス殿下にお目通り願いたいと……」
リーヴェスはやや目を大きく見開く。だが、即座に頷いた。
「突然の訪問、失礼致しますわ。至急、確かめたいことがございます」
「これはこれは婚約者殿。いきなりのご訪問とは、また熱烈だね」
突然の客にリーヴェスは、ニッコリと爽やかな微笑みを浮かべる。それをスルーして、アマーリエは本題に切り込んだ。
「愛人とはどういう事ですの?」
ツカツカとヒールの音を響かせて、アマーリエは執務机の前までやってくる。
「そんな素振り、今まで無かったはずですわ!」
リーヴェスは手元の書類で口元を隠しながら、呑気に答える。
「話が伝わるのが早かったね。騎士団の手伝いをしていた時に見つけてね。俺のお気に入りなんだ。……まあ、あまり虐めないであげてね」
アマーリエは両腕を組んだ。
「もう既に会ってきたのですけれど、」
「本当に早いね……」
やや呆れたようにアマーリエを見上げたリーヴェスとは対照的に、アマーリエは目を細めた。声のトーンも自然と静かなものに変わる。
「本当に平民ですの?あの方」