一途な淫魔の執着愛〜俺はお前しか一生抱かない〜
「なんだ〜この前男に振られた事引きずってんのか〜?」
「あ、そう言えば私って振られたんだった」


 洸夜との出会いがインパクトありすぎてすっかり振られた事を忘れていた。


「なんだそりゃ、本当お前の男への関心の無さ、そりゃ男も逃げるわな〜」
「うぅ、ぐうの音も出ないっ!」
「ははっ、まぁさっさと次の恋でも見つけな〜。俺はタルト生地焼くからお前はスポンジ宜しくな」
「もう焼いてます!」
「はい、流石です〜、んじゃ開店に向けて作るぞ〜」


 香ばしいケーキの焼き上がる匂いが厨房に充満する。クリームの甘い匂いや色鮮やかなフルーツをカットしフレッシュな酸味のある匂いも香ばしい匂いの中に混ざった。
 焼き上がったスポンジは明日用に寝かし、昨日健が作ってくれていたスポンジを三枚にカットする。クリームを塗り一センチほどにスライスした苺を満遍なくのせもう一度クリームで蓋をする。ケーキホール全体にクリームを塗りナッペするのだが日和はこの工程が一番ケーキ作りの中で大好きだ。真っ白な一つも足跡のない雪景色のように綺麗なナッペが出来た時はケーキを焼くようになって何年も経った今でも変わらず嬉しくてニヤけてしまう。
 ショートケーキ、チョコケーキ、チーズケーキ、モンブラン、ミルフィーユ、フルーツタルト、まだまだ沢山の種類のケーキをガラスのショーケースに並べた。艶々輝いていてまるで宝石が並んでいるように綺麗でうっとりしてしまう。


「うんっ、今日も素敵な子達が出来上がり!」
「俺の作った苺のタルトなんてツヤッツヤ〜」


 十時の開店時間まであと十五分。

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