一途な淫魔の執着愛〜俺はお前しか一生抱かない〜
(はぁ、なんなのよ。もう関わりたくないのに)


 どっと疲れが出て長い溜息が絶え間なく溢れ出す。


「ひーよーりー」


 ワクワク、何あのイケメン、どんな関係? もう綾乃の聞きたい事が顔にしっかりと書いてある。


「昨日勢いで結婚相談所に行ったんだけどそこの社長みたい」


 キャーと女子高校生のような黄色い声で
「御曹司じゃん、玉の輿じゃん」なんて一人テンション上がっている。
 御曹司だろうと、玉の輿だろうと変態ヤリチン野郎は無理。断固拒否!
 スタッフルームから聞こえてくる声に耳を立てる。


「では、さっそく宜しくお願いしますね」
「もちろん。全力を尽くさせてもらいますよ〜」


 やっぱりこの話は成立すると思った。
 満足げな洸夜と、嬉しそうな健がスタッフルームから戻ってくると「契約成立だ」と洸夜が日和に向かって嬉しそうな優しい笑顔を向けた。
 ドキンと心臓が高鳴る。


(な、なによ。嬉しそうな顔しちゃって)


 不意に見せられた笑顔に胸がドキンとしてしまったのは、意地悪な笑顔ではなく、優しい笑顔だったから、ただそれだけだ。そう日和は自分に言い聞かせた。


「日和の作るケーキはどれも最高に美味しいからな。きっとこの企画は成功すると思う」
「美味しいって、貴方は私の作ったケーキ食べた事ないですよね?」


 日和はキッと洸夜を睨みつけた。その場凌ぎのお世辞ならいらない。毎日丹精込めて作っているケーキだ。食べていないのに美味しいと言われるのは嫌な気持ちになる。


「あるに決まってるだろう。秘書に何度も買いにこさせていたからな。日和の作ったザッハトルテが俺の一番のお気に入りだ」

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