一途な淫魔の執着愛〜俺はお前しか一生抱かない〜

「仲直り、出来た?」


 二人の会話を聞いていた日和が歩み寄ってきた。
 洸夜の隣にちょこんと立ち、嬉しそうに笑っている。自分のことより人の心配をするお人好し、小さい頃から変わっていない。


「悠夜さんも凄く辛かったんだね……でもね、コイツも本当はお母さんがいなくてずっと寂しかったんだよ。写真も全部捨てられちゃって、五歳の頃の記憶が大人になるにつれてどんどん薄れていっちゃう事に、そんな自分に凄い怒ってた。仲直りできてよかった。やっと一緒になれた兄弟なんだからさ」


 日和は大きく手を広げて洸夜と悠夜を抱き寄せた。まるで小さな二人の兄弟を包み込む優しい母親のように、温かく二人を抱きしめた。


「……僕まじで日和さんの事好きになっちゃうかも」
「は、はぁ!? 何言ってんだお前! 日和から離れろ!!! 俺はお前を許した訳じゃない! 日和は俺のだ!」


 日和はクスクス笑っている。いや、笑ってる場合じゃないだろう!?
 でも、日和が笑ってくれるなら嬉しい。
 釣られて洸夜も笑みが溢れた。そして目頭がカッと熱くなる。涙が流れ落ちる直前の熱さだ。
 もし、父親が母親に暴力を振るっていなければ家族四人で仲良く暮らしていたのかもしれない。でけれどそれでは日和には出会えなかったのだから。それはそれで結果オーライと思ってしまう自分がいた。
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