イジワルな君の一途で不器用な恋心
コーヒーをひとしきり味わったところで口を開く。
「昨日、部活の後輩とケンカしちゃったんです」
「そっか。その子って、この前一緒に来てた……?」
「……はい」
休日返上してわざわざ時間を割いてくれたんだから、辛くても全部話さなきゃ。
激しく鼓動する心臓をマグカップの温かさで落ち着かせ、昨日起きた出来事とケンカに至った経緯を話した。
「叱るのって、難しいですね」
「わかる。特に今の時代はすぐパワハラだーとか言って問題になるし。暴言と体罰は論外だとしても難しいよね」
「春岡さんは、経験あるんですか?」
「うん。私、カフェ開く前はOLやっててね。新人さんの指導を担当していたの」
会社員時代の話を語り始めた春岡さん。
新卒で入社した会社で10年間働いていたそうで、勤務3年目から新入社員の育成係を任されたという。
「ある日、給湯室で、『ヘニャヘニャしてて鼻につく』って陰口言ってるのを聞いちゃって」
「ヘニャ……? 態度、とかがですか?」
「多分。私、昔から真顔が怖いって言われることが多くて。それで、第一印象を良くするために、口角を上げる癖をつけてたんだけど……裏目に出ちゃったみたいでね」