おんなじがほしい

驚きと。

喜びの気持ちが。

次から次へと交互に、ピョコピョコと心の中で飛び跳ねている。



「なんか返事してよ。……寂しいじゃん」



そう言って西原くんは腕の力を緩めて、私の顔をのぞきこんだ。



「あはっ、田畑さんそれ、どういう表情?」



私はそれには答えず、
「おんなじ?」
と、尋ねた。



「西原くん、私とおんなじ気持ちなんですか?」



ニイッと笑って西原くんは、
「そうだよ。おんなじ気持ち、田畑さんにあげる」
と、また私を抱きしめた。



じわっと視界が再び揺れて。

私は両腕を伸ばして、西原くんの背中にまわした。



手に入れた「おんなじ」を。

ずっと大切にしようと心に誓いながら。









        ー完ー








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