イケメンを好きになってはイケません⁈
 でもそのとき……

 シロップみたいに濃密で甘い空気を無粋なスマホの着信音が、いっぺんにかき消した。

「ちょっと、ごめん」

 わたしは森下くんから目線を外して、ポケットからスマホを取りだした。

 兄からのメッセージだった。

 ――そこまで来てる。今から行く。

 そうだ!

「あのね、森下くん」
 神妙な顔つきでわたしの言葉を待っている森下くんに告げた。

「ごめんなさい。わたし、付きあっている人がいて、今から来るって」

「えっ、あ……」
 森下くんの顔はみるみる赤くなった。

「ご、ごめん。こっちこそ」
 彼はあわてて部屋を出ていこうとした。
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