イケメンを好きになってはイケません⁈
「これ」
 そう言って書類を手渡すと、彼は気まずい表情のまま受けとった。

 そこにジャストタイミングで兄が訪れた。

「おう、聡子」
「遅かったじゃない。今日は」
 そう言いながら、わたしは兄の腕に手を絡めた。

「へっ?」

事態が把握できず、クエスチョンマークを頭に立てている兄を部屋の奥に追いやってから、わたしは森下くんのほうを振り向いて、無言で手を合わせた。

「すいませんでした」
 そう落胆した表情で言うと、深々と頭を下げて、彼は帰っていった。

「誰? あの男」

「会社の後輩。先週、このマンションに越してきて」

 兄にざっと今日の顛末を話した。
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