丸いサイコロ
<font size="5">27.踊っている人形と、糸の切れた人間たち</font>
辺りが静まる。数秒の硬直の後、誰にともなく、ぼくは呟いた。少し、震えていたけれど、誤魔化すように。
「……結局、あの子からの深入りも、うまく……かはわからないけど、免れたわけだな」
「さあね?」
くすくすと笑って、まつりは鍵をかけ直した。そして、ぼくを見て、言う。
「なんだか、聞きたいことが、ありそうだね」
「いや、言いたいことが、あるんだよ」
「なに?」
「お屋敷中の人がでっち上げた内容、あそこでは言わなかったのって、やっぱり監視が──」
「……ただ、おじさまが、見ていた、それだけだよ。それに別にわざわざ言うこともない。そこについて考えても、あれは、もう今じゃ、ただの野原になっている。どうしようもないからね」
それは、そうだけれど……ぼくは、いったい、何に、引っ掛かっているんだろう?
「あ、あの機械は」
「……落ちていた、それだけだよ。たぶん『別の』目的で使われたんだろう」
あれは、兄とまつりが聞いただけだが、兄は特にコメントしなかったな、そういえば。
どうしてまつりが拾っていて、しばらく持っていたものに、入っていたかって?
さあ、なんでなんだろう。不思議だなあ。
そもそもぼくは、あれが本当に《彼女本人》の声なのかさえわからないし。
「あっ、それをなんであえて──ってのは、別に深い意味はほとんど無いけど……強いて言うなら、持っていくためだよ。『彼女』に。『実はきみたちの免罪を疑ってるんだー』とかっていうと、あの人たち真に受けてさ、ノリノリで答えてくれたからね。あはははっ! 都合よく、進んだよ。あと、それから」
「それから?」
「きみが混乱すると、楽しいからね。彼女たちも必死だから、バレにくかったんじゃないかなー! 楽しかった!」
「……相変わらず、嫌な趣味だな。おじさまっていうのは、やっぱり、《あの人》を──」
「……さあね。でも、頼んだんじゃないかな。《あれ》を見逃してやるから、そうしろ、みたいな?」
「……あのお金は」
「──言えない。保険金、みたいな、ものじゃないのかな? と、だけ」
「そう……それで、彼女たちは、結局なんだった? それに、あの──」
背後で二階に上がりかけていたまつりは、ぴたりと、動きを止める。
そして、にや、と笑った。あの子のように──
「どういう、答えが聞きたい?」
「……そうだな」
ぼくが、それを言うと、まつりはニコニコしたままで、呟くように答えてくれた。機嫌が良いらしい。
「双子がいます。どちらも殺人を犯しています。さて、問題です。それぞれ、どちらかが『Aさんの大事な人』か『Aさん本人』を殺しています。Aさんを殺した方を知るために、何かをそれぞれに一度だけ、言わないといけません。あなたはなんと質問しますか? ただし、片方はお喋りで気性が荒く、片方は静かで、大事な人には優しいです。あ、それから、《道具》は一種類だけ選べます」
……それは、問題だ。