溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。
駅までずっと一緒だった真香さんも知ってるはずなのに…



「あれ? でもあの時絶対に……」

「真香さん?」

「ほんとに,ほんとに千夏に会ってないの?」



念を押すように確認されて,私は気圧されながら頷く。

読書前のチャイムがなって,真香さんは信じられないといった表情で,自席に戻っていった。

やっぱり私が何かしたの…?

悶々と考えて,内容が入っているのかいないのか。

私は読書の時間が終わっても,それを続けていた。



「真理ちゃん,何読んでるの?」

「面白い?」

「あ…うん。面白いよ。作者が好きなの」

「今度,貸してくれない? あっチョコレート食べる?」



私はクラスメートに声をかけられることも,お菓子を貰うことも増えて。

話すことにも慣れたなと思う。
< 105 / 196 >

この作品をシェア

pagetop