溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。

凪side





「あーーーー」



ボスン。

ソファーに仰向けになった僕は,身体に溜まった感情を息に吐き出す。

今日家を出たのは,友達に貸していたCDを返して貰う為だった。

別にあげたって構わなかったけど,よりにもよって貸したのは真理が興味を持ったもの。

取り返さないわけにもいかず,何故か僕の方からCDを受取りに行ったのだ。

散々近くにいる僕だけど,真理が少しでも寂しがってくれたらいいななんて考えはあったけど。

結局早く会いたくなったのは僕の方だった。

遊ぼうと誘われ,午前中だけゲームに付き合い。

ようやく手を振って帰ろうと歩いていると,運悪く山本さんに見つかって。

久しぶりと声をかけてきた彼女は,いつまでついてくるんだろうと思っているうちに,とうとう家の付近まで一緒だった。

家までは知られたくないと断ろうとした時,山本さんはクリスマスの話題を出して。

僕はつい,真理を思い出した。

その数秒で,本物の真理が目の前に現れたから。

僕は一瞬,錯覚かと思った。
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