桜舞う天使の羽~天才心臓外科医に心臓(ハート)を奪われました。


 *

「チッ」

 宗吾さんの口から舌打ちが聞こえてきた。その音に思わずビクリッと体を跳ねさせてしまう。

 男性の前で肌を晒すという、私の軽はずみな行動に正悟さんも呆れているのかもしれない。啓汰さんの言うままに、肌を晒してしまった。さくらさんを愛している啓汰さんなら大丈夫だと思ってしまった。心臓の手術のことを知っているから、この傷を見ても大丈夫だろうと思ってしまった。あんな風に逃げ出すなんて……それほどまでに、この傷は他人から見たら悍ましく、醜いものなのだろう。


 見せられない。

 正悟さんには絶対に見せられない。


 私はブラウスの前をギュッと握り絞めると、正悟の胸を思いっきり突き飛ばした。

「正悟さん、帰って下さい」

 唖然とこちらを見る正悟の体をグイグイと押すと、玄関の外へと追い出した。玄関の外から正悟が何かを言っているが、今の美桜の耳には何も入ってこない。玄関の扉に背を預けズルズルと座り込んだ美桜は、あふれ出る涙をそのままに、その場で泣き続けた。





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