桜舞う天使の羽~天才心臓外科医に心臓(ハート)を奪われました。


 私の大好きな正悟さんの声。

 その優しい声のトーンに押しとどめていた感情が一気に溢れ出し、瞳から涙がこぼれ落ちる。

「正悟さん私、何をやっているんだろう。自分なのに、自分の感情がコントロール出来ないの。啓汰さんにさくらさんに会いたいって言われて、触りたいって言われて拒絶なんか出来なくて……」

「触らせたのか……?」

 ブンブンと美桜は首を振った。

「触らせてない。その前に啓汰さんは逃げ出したから……。私の胸にある手術跡にビックリしたみたい」

 美桜は両手を握り絞めた。

「私……さくらさんを愛している啓汰さんなら、この傷を見ても大丈夫かなって思ったんだ。それなのに逃げ出されて……。前にも同じ事があって……初めて付き合った彼氏も、啓汰さんと同じ顔をして逃げ出したの。それを見て……、正悟さんにも同じ事をされたら私……」

 そこまで話すと、正悟さんが悲しそうな顔をしながら、こちらを見つめてきた。

「俺がそんな男に見えるのか?」

 分からない……。

 だって……あんなにさくらさんを思っていた啓汰さんでさえ、逃げ出したんだよ。

「俺は美桜にどんな傷があろうが、かまわない。俺が愛しているのは美桜自身なんだ。体が目的ではない」



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