この政略結婚に、甘い蜜を
「お待たせ致しました、モーツァルトショコラミルクです」

「あ、ありがとうございます」

お酒を飲む時はいつも、コンビニなどで買って飲む程度だ。華恋は、初めて飲むカクテルに胸をわくわくさせながらグラスに口をつける。濃厚なチョコレートの甘さが口に広がり、飲みやすやに華恋は驚く。

「それ、度数もカクテルにしたら低いし、チョコレート入っとるから飲みやすいやろ?カクテル初心者におすすめのやつなんや。俺も最初はそういうのから飲んだで」

驚く華恋を目を細めて見つめ、カウンターに肘を置いて頬杖をつきながら傑は言う。

「甘くておいしい……。こんなカクテルがあるなんて知らなかった。ありがとう」

華恋がそう微笑むと、傑の瞳が大きく開かれる。そしてその頬が赤く染まり、「全然ええし」と俯きがちに言っていた。だが、その呟くような声はカクテルを楽しむ華恋の耳には届かない。

初めて見るものばかりで目を輝かせる華恋の横で、傑はどこか寂しそうな目をしていた。
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