この政略結婚に、甘い蜜を
そして、十一時頃にバーから帰った華恋は、少しふらつきながら寝室のベッドへと潜り込む。体がふらつき、頭がアルコールのせいでボウッとしている中での入浴は危険と判断し、もう今日は眠ることにした。
アルコールのせいか、ベッドに横になって数秒もしないうちに華恋は眠ってしまう。その直後、玄関のドアがゆっくりと開く。
「ただいま」
出張が思ったより早く終わったのか、零は家に帰ってきていた。そして、愛しい妻の寝顔を見るために寝室のドアを開ける。するとそこでは、パジャマではなくワンピースを着たままの華恋が寝ているため、零は当然驚いた。
「何でパジャマじゃないの?それにこの匂いはーーー」
華恋から微かに漂う匂いに、零の瞳から先ほどまであった光が消える。零の鼻が感じ取ったのはお酒の匂い、そしてーーー男性用の香水の匂いだ。
「ねえ、華恋」
零はゆっくりとベッドの上に乗り、眠っている華恋を見下ろす。もしも華恋が目を覚まし、今の零の顔を見たのなら確実に怯えていただろう。零の目には光がなく、無表情なのだから。