この政略結婚に、甘い蜜を
胸がどんどん苦しくなる。それと同時に、温かいものが溢れていく。

ゆっくりと体が離れた刹那、零の目があの時の傑のような目をしていることに華恋は気付く。だが、不思議と恐怖は感じなかった。

「ごめん、もう我慢できない」

そう言われた直後、二人の距離がゼロになる。互いの唇が触れ合い、華恋の呼吸が止まる。それは、華恋にとって初めてのキスだった。

一瞬離れた唇は、まだ足りないと言わんばかりにまた触れ合う。柔らかく、砂糖菓子のように甘く、胸が高鳴っていく。

キスをされている中、華恋はやっとこの感情が何なのか答えに辿り着く。ずっと心の奥深くに閉じ込め、考えないようにしてきた感情だ。

(私、零さんのことが好きなのね……)

甘いキスに頭がボウッとしそうになる。零が満足するまで、華恋は唇を奪われ続けていた。





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