この政略結婚に、甘い蜜を
華恋はそう思いながら布団をかぶるも、今日は仕事がある。そろそろ起きて支度をしなくてはならない。

華恋が仕方なく体を起こそうとすると、部屋のドアがノックされる。ノックをしてくる人物など、一人しかいない。華恋は緊張を覚えながら姿勢を整え、髪を手櫛で整える。

「は、はい!」

「華恋、起きてる?朝ご飯作ったから食べよう」

「す、すみません。すぐに行きますね」

「うん、待ってる」

ドア越しにかけられた声はとても優しい。昨日のことをまた思い出してしまい、華恋はどこか上ずった声で返事を返した。

(可愛くない声で返事をしてしまったわ……)

そんなことを考えながら、クローゼットから服を取り出して着替え、リビングへと向かう。ふわりといい香りが鼻腔をくすぐった。

「おはよう」

リビングのドアを開けると、零はニコリと微笑みながら紅茶を淹れていた。そしてテーブルには、ハムとレタスのサンドイッチやスープなどの朝ご飯が作られている。
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