この政略結婚に、甘い蜜を
(零さんが選んでくれたのはプリンセスラインのドレスだったっけ。あのドレス、とても素敵だったわ。だけど、せっかくもう一度結婚式をするのだから違うドレスを着てみようかしら。Aラインとかベルラインのドレスって写真で見たことがあるけど、素敵よね)

結婚式場の階段まで来ると、龍羽が手を差し出してくる。いつものエスコートだ。華恋がその手を取ろうとした時、「こんなところで何してるの?」と低い声が響く。

華恋が振り返ると、そこにいたのは今朝仕事に行くのを見送ったはずの零だった。腕を組み、鋭い目でこちらを睨んでいる。

「零」

龍羽が名前を呼ぶと、零は一気に龍羽に詰め寄り、拳を振り上げる。そして、華恋が止まる間もなく思い切り龍羽を殴り付けた。殴られた龍羽はその場に倒れてしまう。

「お義兄さん!零さん、いきなり殴るなんてひどいです!」

華恋が龍羽に駆け寄り零を見上げると、彼は絶対零度という言葉が相応わしいほど冷たい目をしていた。
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