この政略結婚に、甘い蜜を
華恋は、今年の四月から従姉妹の経営しているネイルサロンで働き始めたばかりだ。指を綺麗にし、おしゃれにする仕事が華恋は好きで、出勤するのは楽しみなのだが、休日の日はゆっくり寝ていたい。

「でも、今日は私の誕生日か……」

四月二十四日。今日は華恋の二十一歳の誕生日である。少しわくわくした気持ちで、華恋は白で統一されたシンプルな部屋に置かれたクローゼットのドアを開ける。

クローゼットの中には、白か黒、ブラウン系の地味な雰囲気の服しか入っていない。華恋はその中から白いシャツとジーンズを選び、朝ご飯を食べるためにドアを開ける。

ドアを開ければ、そこは異世界かと疑えるほどの豪華な廊下が広がっている。おしゃれなランプが飾られ、柔らかい絨毯が廊下には敷かれ、働く使用人が華恋に「おはようございます、そしてお誕生日おめでとうございますお嬢様」と声をかけていく。

シンプルな部屋、地味な服からは誰も想像がつかないだろうが、華恋は会社社長の娘ーーーつまりお嬢様なのだ。
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