この政略結婚に、甘い蜜を
「華恋、結婚おめでと〜!急に招待状が来たからびっくりしたよ。まさか、鍵宮グループの御曹司と結婚なんて」

「華恋、すごく綺麗。急に地味になっちゃってたけど、そうやって着飾った方がいいよ〜」

「まさか、華恋が一番に結婚するなんて想像すらしてなかったよ〜。おめでとう!」

友達に次々と声をかけられ、華恋はぎこちない笑顔で何とか「ありがとう」と返す。心から祝福してくれている友達に、華恋は「親に結婚するよう言われて……」など言えなかった。

この時、華恋は初めて招待された人たちをしっかりと見たのだが、華恋の友達として招待されたのは女性だけで、零の友人は全員既婚者だけが参加しているようだ。

(独身の男性は一人もいない……)

全てが変わってしまうきっかけとなった、烏のような黒い髪の男性の姿がないことに、華恋はホッとしていた。

(まあ、あの人が私の結婚式なんかに来たがるはずないわよね)

永遠の誓いを拒んでしまった罪悪感を隠そうと、華恋は夫となった零にはほとんど目を向けず、友達とのお喋りに花を咲かせた。
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