【短編】空に翔ける恋


次の日から、お父さんやお母さん、妹の3人以外は誰も来なくなった。


ようやくわたしを陸上部に入れること諦めたかな。



退院まで後3日。
食事も戻り、少しずつ動けるようになったので退院の許可が出た。


コンコンッ
「木原…」

呑気に考え事をしていると、ドア越しに柏木くんの声が聞こえた。

「あの、この前来た時忘れ物しちゃったんだけど…」
とドアを開けて入ってくる。



忘れ物?そんなのあったっけ…
なんて考えていると、

「木原、言い忘れたことがあって」
と枕元に椅子を持ってきて話を切り出す。



「木原、俺木原が好きだったよ。

中学の時から、お前の走りに憧れてた。
最初は憧れ、それだけだった。

でも、一緒に練習していくうちに、いろんな顔を知って…

また一緒に走りたいなって思ってた。
もっと一緒に走りたいと思ってた。

同じ高校で、同じクラスで、隣の席。
運命だと思ったんだ。

そしたら陸上部には入らないとかなんか宣言するし…


でも、いつも走ってたんだな…」



ぽかん、と間抜けな顔をしているであろうわたしに

「誰とも付き合ってないとか言うから、
俺にも少しくらい希望あるかもなんて思ってた。

でもずっと見てきたんだよ、

そしたら木原の目にはいつも1人しか写ってなくて…

悔しいけどそれは俺じゃなくて。

だけどそのときにふと思った。


その1人に想い馳せてる木原が好きなんだって」

開いた口が塞がらない、
とはきっとこのことだろう。
柏木くんから出てくる言葉1つ1つが重く響く。

「ってええ????私が恋愛?!?!?!」



「まさかの鈍感かぁ、、

じゃなくて!」

わたしのその一言に苦笑いでツッコミを入れ、
再び話し出す。

「いつも走ってたってことは

走るのが好きなんだろ?
同じ短距離専門の俺が守るからさ、

やっぱり陸上部に入れよ。」


ニコッと白い歯を見せ、柏木くんは笑う。

えっ、そんな簡単に無理だよ…
「そんな簡単に無理とか思ってんだろ。

返事は退院まで待つからさ」

「えっ」

「俺を信じろ」
そう言って立ち上がり、ウィンクをして部屋を出ていった。

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