俺の世界には、君さえいればいい。
色んな気持ちがぐちゃぐちゃになって、はっとしつつもまずはトイレに駆け込んだ。
待たせちゃってる、はやく櫻井くんとの待ち合わせ場所に行かなくちゃ。
行きたいのに、伝えたいのに、こんな顔じゃ伝えられない…。
「櫻井…くん、」
本当に私なんかと婚約者でいいの…?
こうして油断なんかなくなっちゃうんだよ。私たちは不釣り合いなの、だからこうして消しにかかってくる。
その矛先が櫻井くんに向かうかもしれないんだよ。
もしかするとゆっこにも向かっちゃうかもしれない。
それを防ぐ方法は、ひとつだけ。
私が櫻井くんと関わらなければいいの。
「嫌だ……、櫻井くんと一緒にいたい…っ、」
私はもう、櫻井くんの良いところや優しいところを知りすぎてしまった。
だから今さら離れるなんて出来ない。
それに櫻井くんはきっとそれを望まないって、そんなふうに自惚れちゃってるから無理だよ…。
「あいり~、結局作戦は成功したの?」
「全然。ほんと、どれも使えなくてゴミ」
個室にいる私には気づいていないみたいだった。
鏡の前に立っているのだろう声は2人。