俺の世界には、君さえいればいい。




俺を前にするといつも頬を赤く染めるのに、今日は逆だ。

むしろ顔色が悪いんじゃないかと思ってしまう。



「由比…さん……?」


「ご、ごめんなさい……、今日、一緒に帰れない…です、」


「え…、用事とか…ですか…?」


「……ううん、もう…一緒に帰れないです、」



敬語に戻った。

最初は頑張っていたけど、最近はずっとずっと由比さんらしく柔らかい言葉で話してくれてたのに。


もう…一緒に帰れない……?


その言葉が妙に引っかかる。

手にもチョコレートと思われるものは持っていなくて、俺の心は少しだけ不安だった。



「ご、ごめんなさい…っ」


「由比さん…!!」


「っ…、」



ペコッと頭を下げて俺の前から逃げてしまいそうだったから、剣道で培った反射神経を使って引き留めた。

掴んだ腕が想像していたよりずっと細くて柔らかくて、愛しさが込み上げてくる。


それなのに…やっぱり不安が渦巻いて。



「も、もう……私に…関わらないでください…っ、もう話しかけるのも…だめです、」


「…なんで、ですか、」



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