俺の世界には、君さえいればいい。
思わずベッドから起き上がって窓の外を眺めた私は、その人を見つけるとピタリと笑顔が止まってしまった。
「───…櫻井…くん、」
どうして、どうして来てくれたの…?
見慣れた制服姿の男の子の背中はゆっくりと遠ざかってゆく。
すると、くるっと振り向かれて咄嗟にカーテンを閉めた。
「っ、おばあちゃん…櫻井くん、なにか言ってた…?」
おばあちゃんも櫻井くんのことは知っている。
もちろん私の婚約者“だった”ということも。
あれから私は家族に櫻井くんとのことを話して、そこまで詳しい詳細までは話せなかったとしても…。
「私は私の好きなように結婚したいな」なんて誤魔化して伝えた。
なにも言わずに見守ってくれていた3人。
「会いたいですって、数分でもいいからって言ってたわよ。
さすがに今回は櫻井くんに移るといけないから、会わせられなかったけれどね」
ビニール袋の中には急いでコンビニで買ったのだろう、スポーツドリンクや口当たりのよさそうなゼリー。
新発売と表記されている美味しそうなスイーツに、お正月のおしるこを思い出させる白玉ぜんざい。