俺の世界には、君さえいればいい。




思わずベッドから起き上がって窓の外を眺めた私は、その人を見つけるとピタリと笑顔が止まってしまった。



「───…櫻井…くん、」



どうして、どうして来てくれたの…?


見慣れた制服姿の男の子の背中はゆっくりと遠ざかってゆく。

すると、くるっと振り向かれて咄嗟にカーテンを閉めた。



「っ、おばあちゃん…櫻井くん、なにか言ってた…?」



おばあちゃんも櫻井くんのことは知っている。

もちろん私の婚約者“だった”ということも。


あれから私は家族に櫻井くんとのことを話して、そこまで詳しい詳細までは話せなかったとしても…。

「私は私の好きなように結婚したいな」なんて誤魔化して伝えた。


なにも言わずに見守ってくれていた3人。



「会いたいですって、数分でもいいからって言ってたわよ。
さすがに今回は櫻井くんに移るといけないから、会わせられなかったけれどね」



ビニール袋の中には急いでコンビニで買ったのだろう、スポーツドリンクや口当たりのよさそうなゼリー。


新発売と表記されている美味しそうなスイーツに、お正月のおしるこを思い出させる白玉ぜんざい。



< 196 / 253 >

この作品をシェア

pagetop