俺の世界には、君さえいればいい。




私のネクタイも緩めようとしてくる、隣クラスの物静かな人気者さん。

ゆっくり、だけどその先を求めている色気いっぱいの顔で、そして的確な動きで。



「だめ…っ、櫻井くん…!」



とんっと精一杯に目の前の胸を叩く、抵抗になっているか分からない抵抗。

すると櫻井くんは、外してしまった自分のネクタイをベッド端に放り投げるかと思いきや───…



「わっ、えっ…」



それで私の両手首を優しくもきつく縛ってしまって。


……固定……されてる……?



「櫻井くん…!手がっ、これじゃあ動かせない…っ」


「…だってそうしなきゃ逃げるでしょ、かなの」


「っ…、」



ブレザーを脱がされて、ネクタイはそのまま、今度はプチっ、プチっと私のワイシャツのボタンをひとつひとつ外してゆく。

中に着ているキャミソールを目にすると、もっと動きは早くなって。


櫻井くん……?

これはだめ、まだこれは絶対だめ…!


どうにか止めなきゃ、いまの櫻井くんは櫻井くんだけど櫻井くんじゃない。

櫻井くんをどうにかしてでも呼び起こさなくちゃ。


たとえば怒らせるようなことというか、困らせるようなことを言えばいいんじゃないかって…。

うぅ…っ、どうしよう……っ!


───………あ。



「むっ、ムッツリ……!!!」


「……え、」


「さっ、櫻井くんのムッツリ……!!」



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