俺の世界には、君さえいればいい。




前にゆっこがそう言ったとき、櫻井くんにしては珍しく声を上げていて。

顔を赤くさせて怒っていたから。

これなら効果あるんじゃないかなって……。



「───っ!?!?えっ、俺、なに、うわっ…!!由比さん縛られてる……!!
いや俺が縛ったんだ……!!俺ですよね…!?そうです俺でした……!!!」



あったみたいだ。

効果は抜群だったみたいで、いつも通りのピュアな櫻井くんをたぐり寄せることが出来たらしい。



「すみませんでした……!!!」



秒速で私の手首を解放して、秒速でお互いの崩れた制服を元通りにして。

そしてベッドから瞬時に飛び降りてからの───



「本当にごめんなさい……!!!」



もし【土下座の正しいやり方】という教科書があったとするなら。

そこに載っているような、お手本になっちゃうくらいの綺麗で丁寧な土下座を披露した櫻井くん。



「完全に順序をまちがえました……」



おでこが床にくっついてしまう、深々とした土下座。

すると櫻井くんは頭を上げて当たり前のように立ち上がった。



「竹刀、ちょっと竹刀持ってきます。…あ、いや道場に木刀あるんで、そっち持ってきますね、もう容赦なく刺してください」


「えっ、落ち着いて櫻井くん…!私は大丈夫だから…!」


「大丈夫なわけありません。俺が第三者だったら、俺が俺を刺してますよ」



怖いことサラッと言っちゃう…。

こういう真面目なところも櫻井くんの良さなんだろうけど…。



< 218 / 253 >

この作品をシェア

pagetop