俺の世界には、君さえいればいい。
嬉しい───と、櫻井くんの震える声が部屋にふわっと響いた。
私もうれしい。
信じられない……夢みたい。
「お、俺のこと…、好き、ですか…?」
「っ……だ、…大好き…」
「…!」
やっぱり、櫻井くんによく似ている。
数日前に病院で話した女性は。
もしかして本当に櫻井くんのお母さんだったりして…。
でもその答えは、また近いうちに分かるだろうから。
「俺も、…大好き、です」
「っ、け、敬語は…取らないの…?」
「…取ったら、なんか、順序守れそうになくて、」
あ、そういえばさっきの縛ってきた櫻井くんは敬語じゃなかった。
それに名前で呼んできてたような…。
「ふふっ、櫻井くんの敬語…私すきだよ」
「……由比さん、…さっきの…もう1回いいですか、」
「……うん…、」
ぎゅっと目を閉じると、手なずけるようにふわっと髪を撫でてくれる。
「俺が───…絶対に守ります」
さすが剣道部絶対的エースだ。
さっき交わしたものが初めてのはずなのに、もうコツのようなものを掴んでる。
女の子を喜ばせて緊張と安心を作ってしまう、コツを。
「ん…っ」
「…もう1回、いいですか、」
「…っ、うん、」
本当に重ねるだけの、触れるだけのキス。
守ります、ぜったい俺が守るから───…。
ひとつ、またひとつと欲張りに合わせられる度に、そんな声が聞こえてきた。