俺の世界には、君さえいればいい。
ひとめぼれ……?
櫻井くんから「すき」という2文字が聞けたことが信じられないのに、それに加えて一目惚れだなんて…。
「わ、私も……同じ、です、」
「…あのとき、ですか?」
「うん…。私なんかに声かけてくれて…優しい顔してくれて、そこからずっと…気になってて、」
だから婚約者として櫻井くんが私の前に座っていたとき、本当はラッキーなんて思っちゃってた。
こんなことあるんだ…って。
だからあの花壇のてんとう虫が、本当に幸福を運んでくれたんじゃないかって。
「俺は、俺が由比さんと話してみたくて声をかけたんです」
そっと手が握られる。
握り返していいのか、どうしようか迷っていると、くすっとくすぐるような声が落ちてきた。
「…待ってたの、」
「…え?」
「櫻井くんが声かけてくれないかなぁって…待ってた」
話しかけていたのはてんとう虫だけじゃなかった。
そう思うと計算高くて嫌な女だねってなるけれど、それでも私も話してみたかったから。
だけど虫に話しかけるような女なんか普通は引かれる。
それなのに声をかけて、新しい発見を教えてくれたのが櫻井くんだ。
「…まじか、」