俺の世界には、君さえいればいい。
両親は由比グループの代表と副社長として忙しい毎日で、昔からおばあちゃんが私のお世話をしてくれていた。
かといって親の愛情が薄いわけでもなくて、お父さんもお母さんも出来る限りは私との時間を優先してくれる。
だから何不自由ない生活を送らせてもらっている日々だった。
「櫻井さんの息子さんとはうまくやれて……そうね。心配いらないみたいだわ」
気を緩めると意識は遥か遠くに飛んでいってしまう。
そんな私を見つめて、ホッとしているおばあちゃんの声だって聞こえてはいない。
『由比さん、俺もう我慢できない』
『えっ、さ、櫻井くん…!?』
いつも教科書どおりピシッと着こなされた制服、上の位置で留められているネクタイ。
そんなものを緩めながら櫻井くんは私の上に股がってきた。
『さ、櫻井くん、ネクタイ…っ』
『外していいですか?俺のも…由比さんのも』
『だっ、だめ……っ』
『どうしてですか』
ぐいっと右手で緩める姿は、これはもうすっごく目に毒だった。
覗いた白い首筋に、鎖骨。
見てはいけないものが目の前にあって、思わず顔を逸らしてしまえば無理やりにも戻される。