俺の世界には、君さえいればいい。
『───かなの。』
『っ…、あっ、ゃ、』
耳元、通り抜けながらも残るウィスパーボイス。
甘くて、とろけてしまいそうで、耳がふにゃりと形なんか無くなっちゃうんじゃないかってくらい。
『いい?…かなの』
『っ、う…ん…っ』
そんなふうに敬語だって取れちゃって、そんなふうに名前を呼んでくるなんてズルい…。
だけど、私だって期待している。
いつもいつも期待をしている。
だから前だって目を閉じてしまった。
「───………さむい…、いたい、」
ぶるるっと、吹き抜けるすきま風を受けた身ぶるいに目覚めた朝。
かけ布団を抱き枕にしながらベッドの下。
「……。」
……夢だった。
なんて夢を見てるの私…。
はしたないというか……ハレンチだ。
「さ、櫻井くんはそんなことするはずないの…!私のバカっ」
ごめんなさい櫻井くん。
あんなイメージを覆すような夢を見てしまって、本当にごめんなさい。
ネクタイなんか緩めないのが櫻井くんだ。
隙なんかなくて、ぼーっとしているように見えるのに、どこから入ろうとも隙間が見つからないような人が櫻井くん。