俺の世界には、君さえいればいい。
「さ、櫻井くん、」
「ちょうど見かけて、」
もしかして見かけたから走って来てくれたの…?
段ボールを持っていた櫻井くんは、それを足元に一旦置いた。
「櫻井くんのクラスはお化け屋敷だったね。仮装とかするのかな…?」
いつの間にか前よりもスムーズに敬語じゃなく話せるようになった。
それでも彼はまだ敬語。
だけど櫻井くんいわく、よそよそしくしているわけではないという。
だから私も櫻井くんの敬語に慣れてきて、心地よくもなっていた最近で。
「…由比さん、」
すると櫻井くんは無表情ながらに近づいてくる。
ずんずん近づいて、私を追いやるように、そして追い込んでくる。
「えっ、わっ、」
とんっと、窓際に背中がぶつかった。
追い詰めてくる寸前でピタッと止まった彼の視線は、ゆーっくりと下に移される。
それは私のスカートだった。
「スカート…短くないですか」
「……あ、」
そうだった…。
POP作りにペンキを使っていたから。
付いちゃったら大変だと、ゆっこが短く調整してくれて。