俺の世界には、君さえいればいい。




そして私は数人の女の子たちと教室の前に飾るPOPと、メニュー表作りを担当。

放課後に残ってまでも本格的に仕上げようとしていた。


といっても、こういうものはゆっこのお得意だから。

私は色塗りのサポートと、ごみ捨てだったりの雑用をしているだけという…。



「あっ、ねぇ!由比さんどっか行く?」


「今からごみ捨てに…」


「ならついでに家庭科室からホットプレート持ってきてもらっていい?」


「あ、わかり…ました」



どのクラスも文化祭の準備で賑わっていた。

お祭りのような雰囲気にはしゃぐ生徒がほとんどで、先生たちも青春を思い出すように楽しそう。


廊下を歩く度に甘い匂いや香ばしい匂いが広がって、お昼にお弁当を食べたはずなのに胃が刺激される。



「よし、次は家庭科室…っと」



ごみ捨ては無事に完了。

裏庭から校舎に戻って、連絡通路を小走り。



「由比さん、」


「…!」



と、そんな私を追いかけるように少し息を切らした声に名前を呼ばれた。


たったそれだけでトクンッと心臓が跳ねてしまって、だけどそれを認識するとドキッと重い音に変わる。



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