俺の世界には、君さえいればいい。
「それわざとじゃない?あーもう、こんなときにあたし背中向けてるってどーいうことなのよ!」
「…大丈夫だよ、ゆっこ」
「もー!見てたらすぐ摘発してあげれたのに…!!」
「うん…、ありがとう」
おかげでジャージ姿。
制服は濡れてしまったし、出来る限り水で色を落としたとしても同じようには着れそうになく。
そのまま帰ろうとしていた放課後、タタタタッとうしろから誰かが駆けてきた。
「ひゃ…!」
ぐわっと肩が引っぱられる。
そんな細い私の声を聞いて、すぐにパッと離れた手。
「あ、ごめんなさい。…由比さん、なにかあったんですか」
櫻井くん登場だ。
出来れば今はスルーして欲しかった、見ないふりで乗りきって欲しかった…。
「あー、文化祭の準備でバケツひっくり返しちゃって。それでもうビッショビショ」
「え、」
代わりに答えてくれた友達。
いまは私の腰に巻かれていないカーディガンは、手にぶら下げたビニール袋の中だ。
「大丈夫ですか?怪我とかは、風邪とか引いてませんか?」
「うっわ、ムッツリプリンスやさしー」
「……は?」
「ゆっ、ゆっこ…!!」