俺の世界には、君さえいればいい。
ガラガラガラ───ぴしゃん。
そこは視聴覚室A。
この文化祭では使われていない教室のひとつ。
「櫻井くん……だよね…?」
「……」
「お化けは喋っちゃだめな設定なのかな…?でも今は誰も見てないから…」
「……」
本当に本当に櫻井くん…?
あれ、どうしよう不安になってきた。
だってここまで呼んでも返事がないのは初めてだから…。
それに、さっきあった出来事を思い出すと恐怖も少し出てくる…。
あんなにも冷たい言葉を言ってきた人は誰なんだろうって。
すると、傍にあった椅子にぽすっと腰を下ろしたお化けさん。
「……由比さん、」
「っ!」
それだけで安心感がぶわっと広がって、思わず手を伸ばして仮面とフードを取ってみる。
「…ふふっ、櫻井くんだ」
その仮面の下は、すっごく格好いい人が出てきた。
サラッと柔らかそうな黒髪が揺れて、無造作に跳ねる毛先が可愛くて。
「ど、どうかしたの……?」
だけどいつもより元気がなさそう。
表情はあまり変わらないけど、空気感とか、目線とか、眉の感じとか。