俺の世界には、君さえいればいい。




「……さっきの、」



ようやく口を小さく開いてくれた。

本当なら聞こえない音量だけど、ここは誰もいないから伝わってくる。



「さっきの男……誰、ですか」



さっきの男って…。

晴哉くんのことだ、絶対そう。



「あっ、えっと、小学校からの同級生で…」


「…仲良さそうにしてたから、あの人のこと好きなのかなって…思いました」


「え、ちがうよ…!?それだけは絶対ないです…!」



それだけはない。

仲良さそう…?本当にそう見えたの…?
それに好きでもないのに…。


むしろ櫻井くんに来てもらえて、本当に本当に助かって。

来てくれなかったらどうなっていたのかと考えると顔が渋る。



「…ここ、乗ってください」


「……え、」



ここって、お膝の上…?


まるでそれをしたら信じます───なんて、ちょっとズルいことを言われたみたいだ。


ぽんぽんと自分の膝を叩く櫻井くんは、無表情だけど…。

やっぱりいつもと違う甘さがあるっていうか、声だって少しかすれていて。



「…嫌、ですか、」


「う、ううん…、は、恥ずかしくて…っ」


「俺も恥ずかしいです。…けど、乗ってほしい」


「っ…、」



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